固有状態の意味

外から入ってきたものに、何らかの規則的な変換を行って、その結果を出力するようなものを「作用素」と呼びます。 ある箱があって、上から「4」を入れると それを「2」に変換して出し、「9」が入ってきた場合は「3」にして出すとき、これは作用素です。

作用素の例

作用素による変換には、必ず「規則性」が必要です。
このケースなら「入力のルート(平方根)を計算して出力する」という規則です。

作用の相手は数字に限りません。 カンパリを上から注ぐとカンパリソーダに変化させ、 焼酎を注いだ場合には酎ハイにして出すような機械も、作用素といえます。

カンパリ→作用素→カンパリソーダ

「注入された液体と同量の炭酸水を加えてから出力する」というのが、この作用素の規則です。 レモンジュースを入れたらレモンソーダが出てくると予想できます。

作用素は「作用する」のですから入力とは違うものが出力されます。 しかし、ごく稀なケースで、入力と全く同じものが出てくることもあります。 作用するのを忘れたのではなく、正しく作用したにもかかわらず、結果が入力と同じになる場合です。 例えば、上記の作用素に「炭酸水」を入力したときです。

炭酸水→作用素→炭酸水

炭酸水の炭酸水割りを作ると、結果は炭酸水です。 作用素は正しく機能しましたが、出力は入力と同じです。 作用した結果が作用する前と同じものであるとき、その入出力のことを「固有状態」といいます。

固有状態→作用素→固有状態

固有状態には重要な意味があります。それは、作用素が行う作用の「本質」が固有状態に表れるということです。 炭酸水が変化しないように見えたのは、それが「炭酸水を加える」という作用素の作用そのものと一致していたからです。

作用素の内部がどうなっているのか、よく解らないような場合でも、 固有状態さえ見つけられれば、その作用素が行う「作用の本質」を知ることができます。

概念を可視化するために固有状態を探すのも同じ理由です。 個々の概念間の相互関連表を作用素 と考え、この作用素に作用させても変化しないような固有状態を発見できれば、 それは作用素の本質、つまり「概念の本質」を表すことになります。

固有状態→作用素→固有状態

相互関連表に並ぶ「0」や「1」は、特定の2つの概念間の関係を表すだけで、全体の構造までは分かりません。 しかし、相互関連表の固有状態を見つけることさえできれば、固有状態の位置に各概念を置くことで、 概念の本質(概念の全体構造)が可視化されます。



何かの概念を可視化したいとき、下記のような全概念間の相互関連表さえあれば、あとは 総当たり方式で固有状態を探すことができる、ということは解りました。
クラウンの位置
しかし、よく考えてみると、この表を実際に入手することは困難です。 誰かが概念ちゃんに代わって関連の有無を答えてしまうという方法もありますが、 それでは、答えた人のモノの見方が可視化されてしまい、概念の可視化にはなりません。

実は、固有状態には「非局所性」という量子力学に特有の性質があり、これを上手く利用すると、 関連表が無くても、固有状態を知ることができます。

この非局所性は、量子力学で最も重要な性質です。 そして、概念の可視化など文系の課題の解決に量子力学が意外な親和性をもつ、最大の理由でも あります。



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