#10■固有方程式とは?

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線形代数における固有方程式とは、与えられた行列に対し、掛けても方向が変化しないような特別なベクトル(固有ベクトル)を求めるための方程式のことです。説明を簡単にするために省略していた部分を含めて詳細に示すと下図のようになります。

Ax=λx(固有方程式)

行列「A」と、ベクトル「x」と、普通の数「λ」があって、これらの間に「Ax=λx」という式を満たすような、「x」と「λ」を求めるという方程式です。この方程式での未知数は「x」と「λ」の2つです。「A」だけが判っていて、「x」も「λ」も未知です。未知数が多すぎて、解けないのではないかと感じられるかもしれませんが、解くことができます。

「Ax=λx」の「λ」をちょっと無視して、「Ax=x」だと考えると、この式の本質がよくわかります。 つまり、ある行列「A」が与えられたときに、それに掛けても(作用しても)方向が変化しないようなベクトル「x」を探す(「x」の長さは無視して)わけです。 そして「x」の方向さえ決まれば、そのとき「x」の「長さ」がどのくらい変化するのか、その変化倍率を表す「λ」(これを固有値と呼びます)も、自動的に決まるのです。

量子力学の波動方程式も、これと全く同じ構造になっています。

Hψ=Eψ

初めて方程式を見たとき、どうして左右両辺にψ(波動関数)が登場するのか、違和感を感じるかもしれません。 ψ(波動関数)がH(作用素)に作用した結果が、ψ(波動関数)の形と同じで変化しない、そういう関数を見つけられれば、 それがψ(波動関数)です。 そのψが示す「状態」において、E(固有値)という観測値が得られます。

線形代数と量子力学は、数理構造が同じなのです。  次へ >