#07■ 因果関係を超えて

物理学に限らず、医学や経済学や心理学でも、「原因に法則が作用して結果を生じる」と考えるのが普通です。 いわゆる「因果関係」という考え方です。
この「原因→法則→結果」の形式は、「入力→作用素→出力」と一致しています。

原因→法則→結果

ほとんどの近代科学が、「結果には必ず原因がある」という前提の上に成立しています。 そして、原因が結果へと変換される「法則」がどのようなものであるかの研究に邁進します。 法則さえ解明できれば、望ましい結果が得られるように、物事をコントロールできるようになるからです。

ところが、固有状態というのは、原因(入力)と結果(出力)が一致する状態です。
これは、「因果関係」という枠組からみると、想定外の事態です。

固有状態→作用素→固有状態

しかし、これが「量子の世界」の原則です。 原子の外側では「原因→法則→結果」があたりまえですが、原子より内側には、それと異なる世界が存在します。

モノとは違って、抽象概念については、それが「原因」なのか「結果」なのかさえ、判然としないことも多いものです。 そもそも「抽象概念」というものは、多数の概念との関係性の強弱が生み出す「波」のようなものです。 さらに、それが物質の波動ではない点でも、「量子」と似たところがあります。

「量子力学」と「抽象概念」には、親和性が存在します。
抽象概念を「量子系」と捉えて、量子力学系の数理を、そのまま応用できます。

量子力学は、文系にも革新をもたらすものです。      次へ >