固有状態の計算方法

たとえば、「クラウン」の位置(X座標)は、関係するすべての概念(クラウンに対して パネルを揚げた全ての概念)のX座標を足してから総数で割って求めます。
クラウンの位置
ある概念の位置は、それに関係する他の概念の位置の中心(平均)です。

各概念に、他の概念がどう関係するかは、次のような1つの行列にまとめられます。
クラウンの位置
行と列に全概念を並べておき、行の概念が列の概念に関係があれば「1」、関係なければ「0」にしています。 先ほどのルールだと、パネルを掲げる場合が「1」にあたります。 この行列は全概念間の相互関連を表すことになります。

例えば「高級」の位置を計算するには、他のすべての概念の位置と、「高級」の 行にある「0」または「1」を掛け算して、その結果を全て足し合わせます。 そうすると、無関係な概念の位置は「0」で消され、関係する概念の位置だけが合計されます。 この合計を「1」の総数(関係ある概念の総数)で割れば、関係がある概念だけの平均的な位置、つまり「雲の重心(中心)」が計算できます。
クラウンの位置
こうして「高級」という概念の位置が決まります。他の概念の位置も同様です。

しかし、よく見ると不思議な点があります。 「高級」の計算には「洗練」の位置が必要ですが、 その「洗練」を計算する際に「高級」の位置を使っています。
これでは堂々めぐりになってしまって、解けない方程式のように見えます。

そもそも、上から入ってくる「−0.47」や「0.41」といった数字が、どこから来たのか、わかりません。

このような堂々めぐりを含む式を、「固有方程式」といいます。
固有方程式は量子力学の中核ともいえるほど、頻繁に登場する方程式です。

実際どうやって解くのでしょうか。 まず、各概念に仮の位置を与えます。 仮なので、どんな数値でも構いません。 たとえば、0.01刻みで一列に並べてみます。
0.01刻みで一列に並た位置

この位置をもとに、各概念雲の中心(重心)を計算すると、次のようになります。 クラウンの位置
この結果、仮の位置は間違っていたことが判明します。 なぜなら、もし、これが正しい位置なら、 計算結果の中心(重心)は、仮の位置と一致するはずだからです。

そこで、仮の位置を変えてみます。 今度はランダムに置いてみます。
クラウンの位置
しかし、この結果も一致せず、正しい位置ではないと分かります。

そうしたら再び違う位置で試します。 少しずつ位置を変えながら、何回も続けます。 もちろん、ほとんどの場合に 不一致になりますが、何万回、何百万回と続けるうち、下図のように計算結果の位置が仮の位置と一致することがあります。
クラウンの位置
これが、探していた答えです。 ある概念が指定された場合に、その概念に関連する他の概念たちがパネルを挙げて 作る雲の中心に、ちょうど、その指定された概念が立つようになっています。 しかも、全ての概念について、そうなっているのです。

手当たり次第、シラミつぶしに試します。 この検算をパスすれば、それが答えです。 膨大な検算が必要ですが、コンピュータなら瞬時 に実行してくれます。

「AはBに依存する」と同時に「BもAに依存する」という、概念の特性に起因する堂々めぐり問題も これで解決です。 AとBの どちらの位置を先に決めるかを悩む必要はありません。 全ての位置は「同時に」決まります。

一部の概念の位置だけを、先に決めることはできません。
「部分だけを取り出すことはできない」というのが 量子 と 概念 の共通点です。
概念の可視化に上記のような量子系の数理を利用するのは、このためです。


さて、こうして求めた位置に 各概念が並んだ状態を、「固有状態(eigen state)」 といいます。 固有状態には、「概念を可視化できる位置」を超えた、もっと深い意味が隠されています。

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