量子力学 ■Q&A■

【Q】   固有方程式「Ax=λx」とは、「A=λ」という意味ですか?


【A】

いいえ、そう簡単な話ではありません。 両辺の「x」を消してしまうと、式の本質が失われてしまいます。

Ax=λx(固有方程式)

この固有方程式の未知数は、ベクトル「x」と、普通の数「λ」の2つです。 既知なのは行列「A」だけです。

「x」を消すより、むしろ「λ」を無視して、「Ax=x」と考える方が、式の本質に近づきます。 つまり、ベクトル「x」の「方向だけ」に注目するのです。

「Ax=x」という式は、作用素「A」に作用させても、変化しないベクトル「x」 を求めるということです。 つまり、作用素「A」の固有状態となる「x」を探すのです。

この方程式が解けて「x」が得られたとします。このとき、「x」を2倍や 3倍したベクトル、つまり「2x」や「3x」も、この式を満たすことが わかります。これでは解が無限に存在することになってしまいます。

つまり「x」には「ベクトルの方向」だけに意味があり、「x」の「長さ」には あまり意味がないということです。

しかし、いったん「x」が求まれば、それを「A」に作用した結果は、 「x」ではなくて、「x」が「λ」倍されたものになります。 「x」は「A」の作用を受けても方向は不変ですが、長さはスカラー倍さ れます。 つまり「A」の作用の倍率が「λ」です。

いったん、「λ」を無視して「x」を求めれば、結果的に「λ」 も求まってしまうのです。 ですから、「x」と「λ」が両方未知でも、この式は解けるのです。

「x」を介して「λ」が決まるので、先に両辺から「x」を消去して は解けません。

なお、「A=λ」という見方は、行列の対角化の結果そのものであり、ある意味正しい 思考ですが、「x」を介して対角化されることを知っておく必要があります。

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